優秀賞 「調べてみよう 暮らしの水・社会の水」
三好梨加 (041327・安田俊一ゼミ・伊予高等学校) 

私たちは、水なしでは生きられない。日常をふり返ってみるとあらゆる目的で水を使っている。しかし、普段なにげなく使っている水も改めて見つめ直すと知らないことも多くたくさんの疑問にあふれているのだ。この本では、そんな疑問を著者がさらりと解決してくれるので楽しんで読むことができるだろう。

この本を開くと最初に、水に関する十の質問が記されている。「一般の水洗トイレで一回に流れ去る水の量は?」「ドーム球場の屋根に降る雨を集めて利用すると、どれだけの水が節約できるでしょう?」「地下水や湧き水はなぜおいしいのでしょう?」などさまざまな質問である。人によって答えられる数は違うと思うが、全問答えられるという人は少ないだろう。正直のところ私は、十の質問のうち三問ほどしか答えられなかった。そこで、ぜひ多くの人にこの本を読んでもらい、十の質問に挑戦してもらいたい。そこから、きっと「水って奥が深いなぁ」「知っているようで知らないものなんだなぁ」と誰もが実感すると思うからだ。

また、この本のタイトルの一部である「調べてみよう」の部分からも分かるように全体の内容が大きく八項目で構成されていて、それら全てが疑問形になっている。それらの疑問を解決するために調べる方法などを図や写真を用いて明白かつ丁寧に解説してくれるのでとても分かりやすい。著者が疑問を一つ解決するたびに「こういう考え方もできるのか」「そういうふうにも感じられるのか」というように、自分の中で水に対してさまざまな角度から見つめ直すことができると同時に数々の新しい発見がある。

この本の一番の魅力は、暮らしや社会のあらゆる場で使われている水をテーマに多くのことが記されていることである。暮らしや社会といわれても広範囲で、あまりピンとこないかもしれないが実際読んでみると、水の無駄使いをなくすと半端でない水の量が節約できることや下水の地域冷暖房への活用が環境保全にとって大きな効果があること、水質のわずかな違いが酒の風味を大きく左右すること、日本には多くの水の文化遺産があることなど暮らしや社会で使われる水の中には、ここには書ききれないほど数多くの驚きがあるのだ。

この本の中のアラブの富豪の言葉から、私はいかに自分が水について理解していないのかを思い知らされた。その言葉とは次の文章である。

「日本でぜひ買って帰りたいものは?」「水道の蛇口だ。ひねればいくらでも水が出てくる。ぜひ、ほしい」

私は驚いた。まさか水道の蛇口と答えるとは思いもしなかった。

しかし、この発言に驚いていいのだろうか。

このことは、現在私たちがいつでもどこでも水を容易に手に入れられることが当たり前となり、毎日あまり意識することなく水を使っていることを象徴しているのだ。水がないと生きていけない私たちが、ほとんど意識することのない状態で水を使うということに疑問を感じる。

水道が普及していなかった時代、主婦や子供の大切な仕事は水くみだった。遠くの水場から飲み水をくみ家まで運ぶ仕事は重労働で、苦労して運んだ水なのだから、とうぜん大切に使っていた。ところが、蛇口をひねるだけで簡単に水が出るようになったため何気なく水を浪費する習慣が身についてしまったのだ。それが発端となり、知らず知らずのうちに「水は貴重で大切なもの」という認識が薄れてしまい、現在に至っている。

著者は言う。「コップ一杯の水から地球全体の水まで、水を知ることは私たちの社会と世界を知ることだ」と。今日、日本だけでなく世界に視野を広げると人口の増大により水不足が生じているなど、地球規模でのさまざまな問題が生じている。また、「二十一世紀は水紛争の時代になる」とも言われている。このような状況の中で、私たちには何ができるのか。そして何を考えていかなければならないのか。そんな課題を著者自身が読者に問いただし、数々の疑問をもとに話を展開させていく。それを通して、今まで考えもしなかったことや知らなかったことが次々と明らかになり、この本にどんどん引き寄せられていくのだ。

全て読み終えた今、最初に思うことは「この本に出会えてよかった」ということである。とにかく水に関して得たものは多かった。さらに、ひとつのことに対して興味や関心を抱き広く深くとことん追求していくことの大切さも教えられた。

水は私たちの生活にはかかすことのできない最も大事なものだ。もっともっと水について理解すると同時に、新しい発見を見つけだすためにもこの本を読んでみてはどうだろうか?

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