優秀賞 「格差社会-何が問題なのか-」
森林涼(11073913・松井ゼミ・南宇和高等学校)  

格差社会という言葉をみんなも最近よく耳にするのではないかと思う。新聞やテレビなどでもよく耳にするし、国会においてもこの問題についてよく議論されている。しかし、格差問題について、私たち自身あまり理解していない部分があると思う。そもそも、格差は悪いことなのか、それとも良いことなのか分かりづらい。また、どのような影響が出てくるのか見当もつかないと思う。そんな人たちに私はこの本を紹介していこうと思う。

まず、格差社会が拡大した原因について初めに筆者は、長期に渡る不況が影響していると述べている。そのことによって失業者が増加し、所得が減少してしまった。また、日本の雇用システムの変化も原因であると筆者は述べている。近年、日本企業はパートなどの非正規労働者を多く雇う傾向にある。当然パートのほうが正規労働者に比べて賃金は低い。これらのことが、格差拡大の原因となっている。企業としても、できるだけ人件費を抑えようとする意図が見られる。では、このように格差が進行している中でいま何が起きているのだろうか。

筆者は、まず、年齢別による貧困者の割合を示している。その中でも、高齢者の貧困率が最も高くなっており、次に貧困率が高いのは、私たち若年層となっている。これには大変驚いてしまった。働き手となるはずの若者が、定職にもつかず、フリーターやニートになっているのも、前に述べたことが原因となっていると思われる。そして、高齢者や若者たちだけではなく、母子家庭においても同じことが言えるのだ。子育てと仕事の両立は難しく、なかなかフルタイムで働くことはできない。そうなってくるとパートしかなくなり、賃金も低くなり、生活も苦しくなってくる。さらに、親が高所得者であるか、それとも低所得者であるかによって、子供たちにまで影響が出てくる。親が高所得者であれば、子供を塾に通わせたり、有名な私立の進学校に通わせたりすることも可能になってくる。しかし、低所得ではなかなか簡単にできない。確かに、それだけで子供の学力が良くなるとは思わない。その子供のやる気だと私は思うが、それでも様々な知識を身に付けられるのだから、有利といえば有利である。ここまで筆者は、私たち個人の格差について述べてきたが、ここからは地域格差について述べられている。

近年、地域格差は深刻化している。では、なぜここまで地域格差は深刻化していったのだろうか。筆者は、かつて公共事業が、この地域格差を是正する役割を担っていたと述べている。公共事業は金銭面や雇用面で、地方を支えるという側面をもっていた。しかし、現在政府が進めている構造改革は、この公共事業を削減する政策を採ったため、地域格差が生じてきた。しかし、政府はそれに代わる地域支援策を導入しなかった。このことも地域格差の拡大につながったと筆者は述べている。

ここまで見てくれば、格差社会が進行していってはならないとみんなも思うかもしれない。最後に筆者は、「格差社会への処方箋」ということで次のような提案をされている。

まずは、最低賃金制度の改善である。日本は最低賃金が低すぎると述べている。そして、次に筆者は、脱ニート・脱フリーターの政策をあげている。その中でも、公共部門がニートやフリーターに職業訓練を施し、一人前の労働者にするような対策が必要だと述べている。実際にこのような対策は諸外国でも行われている。

また、地域格差を解消するためにも、医療・介護の充実が必要だと述べている。この対策を実行し、成功した自治体もある。どちらにしても地方自治体は、大いに知恵を働かせて、相当な努力をしなければならないと筆者は述べている。この格差問題というのは、私たち国民がしっかりと考えていかなければならない問題である。決して他人事ではなく、しっかりと受け止めるべきだと私は思う。

この本を読み終わっての率直な感想は難しいことが書かれているなと思ったことだ。単語はもちろん、経済に関する用語も多かった。しかし、グラフなどが挿入されており、とても見やすかった。確かに難しいことは書かれているが、現在、日本で本当に起こっている問題なので、きちんと向かい合って読んでほしい。そして、読み終わった後に、わたしもそうだったが経済は人の暮らしと密接な関係であることが見えてくると思うので、ぜひとも読んでいただきたい一冊である。

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