優秀賞 「パンツが見える」
小林 佑他  (051142  松井名津ゼミ 高松南高等学校)  

現代において身につけることが常識となっているパンツと総称される下ばき。このパンツは、昔の日本にはなかったものである。本書では、他の著者の作品を例にし、パンツについての伝説や通説、歴史を論理的に否定、肯定しながら筆者の考えを述べている。

最初に、本書に述べられている2つの通説を紹介しよう。1つめは、「白木屋ズロース伝説」である。通説は、白木屋の女性店員たちはパンツをはいてないことによる「羞恥心」が原因で死亡し、それがきっかけとなり女性がパンツをはくようになったというものである。2つ目は貞操についての通説である。その内容は、女性が貞操を守る為にパンツをはきだし、さらにパンツを2枚3枚と重ねることによって事実上の「貞操帯」をこしらえる人もいたというものである。

筆者は上説の通説を強く否定する。本書では、「白木屋ズロース事件」に比重をおいて否定しているので、そちらの否定理由を述べたい。筆者は、当時の新聞から「羞恥心」による死亡とは全く書いてない事実。つまり、当時の女性たちは、生きるか死ぬかの瀬戸際では「羞恥心」より命の方に心の天秤を傾けていたということを知った。さらに、かつての女性達は家の外で用をたし、多くの公衆便所では、男女が一緒に小用をたすことが当たり前であった。これらのことから、「羞恥心」を強調しすぎる「白木屋ズロース伝説」を筆者は強く否定する。

私は筆者の意見に賛成である。なぜなら、もし私に死の危機がせまるとしたら無我夢中で助かろうとし、「羞恥心」のことは二の次であるからだ。このように、筆者の有力な通説批判に、私はあっけなく納得させられた。この説得力が本書の醍醐味である。

次に、男性のパンチラへの芽生えを紐解いてみたい。今日、パンチラは男性の性欲を刺激する大きな項目となっている。しかし、かつての男性は今ほどパンチラに心を動かすことはなかった。なぜなら、女性がパンツをはきだす前までは、パンツの下にあるものを覗いていたからである。では、一体いつ頃から男性は女性のパンチラに興味をもつようになったのか。それは、女性がスカートをはきだすようになってからである。さらに細かくいうと、女性の行動によるものである。その行動とは、女性がパンツを見られないように脚さばきやスカートの状態に気をつけ、恥ずかしがる。つまり、女性の「羞恥心」による立居振舞に性感をかきたてられていた。これが、「社会の最大公約数は、男性ならパンチラをありがたがる」という形式の芽生えである。

最後は、パンツの普及についてである、現代の女性はたくさんのパンツを持ち、毎日はき替えることが、当たり前とされている。だが、かつての女性達はパンツを1、2枚しか持っておらず、あまり普及はしていなかった。つまり、かつての女性達は同じパンツで数日間過ごすことがあったわけである。ところが、1950年代に訪れたボディファッション産業の降盛により、1人あたりのパンツ所有数が増加した。さらに流行が続いた結果、カラーパンティやパンティストッキングも誕生した。

実は長い年月を経て普及したパンツは少しずつ人間の思考も変えていった。パンツには興味のなかった男性達にパンチラの感情を芽生えさせる。また、女性達に「羞恥心」を覚えさせたように。これからも、パンツに対する人間の思考は変化するのだろうか。

さて、本書はパンツについて多くのこと述べているが、分かりやすいイラストなど導入し、非常に読みやすい。また、多数の例文や、前章の確認を入れることによって何度も読み返す必要がない。さらに、ひとつのことに対して徹底的に調べ、追求していくことの大切さを教えてくれた。この本を読んでみて、パンツについて知らなかった部分や思いもよらない部分が見えた気がした。実は本書を読む前までは、パンツについて意識することは全くなかったが、最後まで読むことにより、他の人は知らないことを自分は知ることができたという満足感を得ることができた。

今日、パンツについての歴史を知る人は少なく、むしろ大昔からはいていたと思う人も多くいるかもしれない。だが、実際は戦後からはかれだしたことを筆者は証明してくれた。これだけでもすごく大変な作業だと私は感心する。パンツは私達の生活には欠かすことのできない大切なものである。ゆえに、パンツについて理解し、新しい発見を見つけだすことも大切ではないだろうか。パンツに興味がなくても、数ページ読んでみると次が気になり、時間が経つのも忘れてしまう。そんな魅力を持つ本書は、zせひ皆さんにも読んでいただきたいお勧めの一冊である。

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